◆当然のことですが、契約は当事者双方が合意に至らなければ成立しません。
合意に至ってはじめて相手方と取引関係に入れるわけです。
契約においては、自分の主張がどんなに正しいと思っていても、相手方が受け入れてくれなければ、一方的な主張に過ぎず、意味がありません。
私が若い頃、相手方から提示された契約書の修正案を作り、会社の顧問弁護士の先生に見てもらったことがありました。原案を大きく変えようとした部分がありましたが、「おそらく相手方は修正を受け入れないだろう。妥協しなければ契約は成立しないかもしれないが、それでは取引は始まらない。取引関係に入ることを優先するならば、妥協しても良いのではないか」と言われました。
当事者それぞれが置かれている状況にもよりますが、相手の言い分を丸呑みすることは稀ではないかと思います。重要な契約であればあるほど、お互いに相手に対する要求は増えると思います。しかし、要求をぶつけ合うだけでは契約は成立しません。ある意味、契約交渉においては妥協は不可避であり、契約書作成は妥協点を探る作業であるといえます。
◆最近は、極端に一方的な契約書を見ることが少なくなりました。契約担当者の中には、自社にできるだけ有利な内容を盛り込もうとし、それが仕事の価値だと考えている人もいるように思います。しかし、あまりに一方的で、バランスを欠く内容だと、相手方から拒絶され、結局修正する羽目になり、余計な手間を増やすだけになるでしょう。
双方に全く平等な内容の契約というのもあり得ないとは思いますが、自社を有利な立場に置くにしても、自ずと限界があると理解し、妥当な線を守るべきでしょう。相手方を尊重する姿勢を忘れてはいけないと思います。お互いの立場によってバランスが取れる点は変わるでしょうが、そのバランスにおいて公平・公正な内容とするよう心掛けるべきでしょう。最近の契約書はそういう傾向にあると思います。
これも私が若い頃の話ですが、中小企業の経営者の方に私が作った契約書を提示したことがありました。こちらは上場企業なので、力の差は歴然ですが、相手方を独立した企業として尊重し、対等な立場として作成しました。
そうしたところが、相手方の経営者の方は、「小さな会社なのに見下すことなく、対等に扱ってくれた」と言って大変感激していました。契約書のような無味乾燥な文書でも、こちらの思いが通じることもあるのだと判り、嬉しかったことを思い出します。中小企業であっても経営者にはプライドがあります。それを傷つけることはあってはならないと思います。
◆相手方から契約書の原案を提示されたとき、内容を良く確認もせずに、言われるままに印鑑を押すような人も中にはいるかもしれませんが、これは非常に危険な行為です。
どんなに相手を信用していたとしても、一度は目を通し、疑問点があれば確認し、不都合な点があれば修正を求めるべきです。
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