フリーランス保護法は、フリーランスに業務を委託する事業者の側に様々な義務を課すものであって、フリーランス側に何らかの義務を課すものではありません。
ですから、フリーランス側としては特に準備しなければならないことはありませんが、だからと言って、フリーランスがこの法律について知らなくて良いということではありません。
かえって、この法律の内容をしっかり理解し、業務を委託する事業者に対して積極的に遵守を求め、フリーランスの地位向上を図っていただきたいと思います。
■フリーランス保護法の構成
フリーランス保護法は、全部で26条からなるコンパクトな法律です。
この法律の構成は、次の表のようになっています。

この法律の登場人物は、次の3者です。
「特定受託事業者」・・・雇人がおらず、受託した業務を一人で遂行する事業者です。法人であっても一人社長はこれに該当します。いわゆるフリーランスのことです。
「業務委託事業者」・・・フリーランスに業務を委託するすべての事業者を指します。
「特定業務委託事業者」・・・フリーランスに業務を委託する事業者のうち、従業員を使用していたり、法人の場合は複数の役員がいて、複数人で業務を遂行している事業者です。
つまり、「特定」ではない「業務委託事業者」は、自分自身も一人で業務を遂行するフリーランスだということになります。
上の表で注意していただきたいのは、委託内容の明示義務はすべての「業務委託事業者」が負いますが、その他の義務を負うのは「特定業務委託事業者」だけであって、それ以外の「業務委託事業者」は義務を負わないということです。
フリーランス保護法は、弱者保護の法律ですが、フリーランスがフリーランスに業務を委託する場合、力の差はそれほど大きくありません。ですから、フリーランス同士の委受託の場合は、委託内容の明示義務だけは課しますが、その他については義務付けまではせず、お互いに良く話し合って決めてください、というスタンスなのだと思います。
■明示しなければならない事項
業務委託事業者がフリーランスに対して明示しなければならない事項は次のとおりです。
①委託者およびフリーランスの商号や氏名(誰から誰へ業務を委託するのか)
②業務を委託をした日(業務の委受託を合意した日)
③フリーランスから委託者に提供する給付の内容(何を作るのか、どんな役務を行うのか)
④納期または役務の実施日や実施期間
⑤納品場所または役務を提供する場所
⑥給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日
⑦報酬の額および支払期日
⑧現金以外の方法で報酬を支払う場合の支払方法(手形など)
なお、クリエイターの皆さんには重要なことですが、給付の内容として知的財産権の譲渡や許諾が含まれる場合は、業務委託事業者は、その範囲を明確に記載しなければなりません。
また、報酬の額には、知的財産権の譲渡・許諾に係る対価を加えなければなりません。
■報酬の支払期日
報酬は、納品後に検査をするかどうかに関わらず、特定業務委託事業者がフリーランスからの給付を受領した日から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間で支払わなければなりません。
通常は、納品後に検査が行われ、検査に合格したら引渡しが完了し(いわゆる「検収」)、報酬が支払われるという流れが多いと思います。
しかし、いつまでたっても検査が終わらないとか、何度もやり直しをさせられて、報酬の支払が先延ばしされるということもありえます。
そのため、この法律では、納品後に検査するか否かに関わらず、納品された日から報酬の支払日までの日数をカウントすることにして、早期支払いを促しています。また、検査完了日も明示することになっていますから、検査を理由とした先延ばしができないようになっています。
■再委託の場合の報酬支払期日
例外的に、事業者が元委託者から受託した業務をフリーランスに再委託する場合は、第3条の明示事項に加えて、次の事項を明示している場合に限り、報酬の支払期日を元委託支払期日から起算して30日以内で、かつ、できる限り短い期間内とすることができるとされています。
①再委託である旨
②委託者の氏名又は名称
③元委託業務の対価の支払期日
■委託者の遵守事項
特定業務委託事業者は、次の行為をすることが禁じられています。ただし、これが適用されるのは、業務委託の期間が1ヵ月以上のものに限られます。
①受領拒否
②報酬減額
③返品
④買いたたき
⑤購入・利用強制の禁止
⑥不当な利益提供要請の禁止
⑦不当な給付内容の変更、やり直しの禁止
遵守事項の適用がが1ヵ月以上の業務委託に限定されているのは、長期的な取引関係において発生する可能性が高い不当な取引行為からフリーランスを保護するためです。
なお、受領拒否、報酬減額、返品については、「特定受託事業者の責めに帰すべき事由」がなければ、することができないとされています。
そもそも委託内容が明確に記載されていなかったり、検査基準が明確でなかったりした場合は、たとえ納品されたものがイメージと違っていたとしても、「特定受託事業者の責めに帰すべき事由」があるとは言えず、受領拒否等はできません。
フリーランス側に「お任せする」などと言っておきながら、いざ納品してみたら「イメージと違う」などと言って受領を拒否することはできません。
■就業環境の整備について
就業環境の整備で注意しなければならないのは、第13条の妊娠・出産・育児・介護への配慮、第16条の契約解除の予告・理由の開示が適用されるのは、6ヵ月以上の期間継続する「継続的業務委託」に限られるということです。
「継続的業務委託」については、特にこれらへの配慮が必要だということでしょう。
■フリーランス保護法の解釈
公正取引委員会と厚生労働省は、フリーランス保護法の各条項の解釈を解説した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(https://www.jftc.go.jp/file/fl_jftcmhlwguidelines.pdf)を公表しています。
この法律について、疑問や不明な点等があれば、フリーランス側も、業務を委託する側も、これに目を通してみることをお勧めします。
■困ったときの相談窓口
もし、フリーランスの皆さんが契約や仕事の上で問題を生じた場合の相談窓口として、「フリーランス・トラブル110番」(https://freelance110.mhlw.go.jp/)が開設されています。
これは、厚生労働省が第二東京弁護士会に委託して運営されているもので、内閣官房、公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁と連携しています。
無料で相談できますので、積極的に利用してみてはいかがでしょうか。
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