· 

著作権トピックス_2021年7月

 

2021年7月13日 政府、「知的財産推進計画2021」を発表、コンテンツ許諾を一括で引き受ける集中管理団体の設置を推進

 

 政府の知的財産戦略本部は、7月13日、「知的財産推進計画2021」を発表しました。

 

■無形資産強化戦略

 

 米国企業では、企業価値に占める無形資産価値の割合が有形資産価値を大きく上回り知財を中心とした無形資産が競争力の源泉となっていますが、わが国の企業はいまだに有形資産価値の占める割合が大きく、無形資産をめぐる競争において、わが国は他の先進国から大きく後れを取っている状況にあるとのことです。

 2021 年6月に改訂された、わが国の「コーポレートガバナンス・コード」において知財投資の重要性が明記されましたが(「著作権トピックス_2021年6月」をご覧ください)、今後は、わが国の企業においても知財に積極的に投資し、これを活用することが強く求められる、としています。

 

■デジタル時代のコンテンツ戦略と著作権制度・関連政策の改革

 

 知財戦略の重点7施策の一つとして、「デジタル時代に適合したコンテンツ戦略」があげられています。

 その中で、「著作権制度改革はもはや、伝統的な著作権者と利用者の間の利害調整問題にとどまらず、デジタルエコノミーの発展スピードに影響を与えうる国民経済的重要課題となっている」との認識が示されています。

 具体的な施策としては、

・著作物の利用円滑化と権利者への適切な対価還元の両立を図るため、拡大集中許諾制度等を基に、簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度の実現

・著作権制度や契約の在り方に関する普及啓発・教育の充実

・著作物の利用に係る契約をサポートするための、契約書の標準的ひな形の提供や、著作権契約の基礎知識・留意事項等をまとめたマニュアルの作成・周知

等が掲げられています。

 

 利用許諾等の権利処理が、集中管理団体によって一元的に処理されるような制度が実現すれば、世の中に溢れるコンテンツが格段に利用しやすくなり、新しいコンテンツの創作が促進されるでしょう。また、利用の対価が確実にクリエーターに還元されるようになれば、更に新たな創作活動を生み出す好循環が生まれると思います。

 

 また、著作権制度に関する啓発・教育と共に、著作権契約の重要性や必要性を反映した施策も予定されており、より一層著作権に対する意識が高まるのではないかと期待されます。

 

2021年7月1日 ソニー、「セサミストリート」国内使用権獲得

 

 ソニーグループは米国の子供向け番組「セサミストリート」の国内使用権を17年ぶりに獲得しました。キャラクターグッズやイベントを企画するほか、番組制作や教育用ゲーム開発も検討するとのことです。ソニーはアニメや音楽で知的財産(IP)を強化しており、成長が続くエンタメ分野との連携でIPの価値を高めていこうとしています(日経電子版より)。

 

 SONYと言えば、いまだにテレビやオーディオ製品のメーカーというイメージが強くありますが、実は、ゲーム、音楽、映画といったエンターテインメント分野の売上がグループ売上の半分以上を占めています。メーカーとしての売上は3分の1程度に過ぎません(ちなみに、金融分野の売上も15%程度と、かなりの規模になっています)。

 SONYは、上のトピックスで書いた無形資産強化戦略で既に成果を上げていると言えますが、更に強化・拡大しようとしている姿勢がうかがわれます。