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著作権トピックス_2021年4月

【1】2021年4月3日 東京五輪の開会式案を報道した文春に組織委が抗議、「業務妨害」として掲載誌回収を求める

 

 東京五輪の開会式演出案を1日発売の「週刊文春」が内部資料をもとに報じたことに関し、大会組織委員会は「秘密情報を意図的に拡散し、組織委員会の業務を妨害するもの」との見解を発表、また、資料の画像掲載は「著作権を侵害する」として、文芸春秋に対し、雑誌の回収、オンライン記事の削除、資料の廃棄などを求めました。

 これに対し、週刊文春は2日、「開会式の内情を報道することには高い公共性、公益性がある。著作権法違反や業務妨害にあたらないことは明らか」などと反論しています。

 

【2】2021年4月14日 ゴーン被告の元弁護人が懲戒請求書を公表したのは「著作権侵害」 東京地裁

 

 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の元弁護人である高野隆弁護士に対する懲戒請求を行った男性が、高野氏が自身のブログに懲戒請求者の実名や懲戒請求書の内容を無断で公開したのはプライバシーの侵害であるとして、ブログ記事の削除などを求めた訴訟の判決が東京地裁でありました。

 東京地裁は、プライバシー権侵害の主張を退けたうえで、懲戒請求書を著作物と認定、高野氏は原告男性の公衆送信権と公表権を侵害したと結論づけ、高野氏にブログから請求書の文書ファイルを削除するよう命じました。

 

【3】2021年5月9日 女性選手の競技画像をテレビ番組から複製、アダルトサイト無断転載で初の摘発

 

 テレビ番組で放映された女性アスリートの競技画像をアダルトサイトに無断で転載したとして、警視庁は9日、サイト運営者の男を著作権法違反(公衆送信権侵害)容疑で逮捕しました。

 アスリートを性的な意図で撮影したり、SNSなどで画像を拡散したりする被害は近年、社会問題化しており、日本オリンピック委員会は、2020年11月より被害撲滅に乗り出していました。

 

 上記の【1】から【3】の事件には全く関連性はありませんが、私は、これらには共通点があると思いました。

 これらで直接問題とされている行為は、プライバシーの侵害や、業務妨害、わいせつ目的での映像利用です。

 しかし、いずれも本筋の問題には踏み込まず、これらの行為を止めさせるための手段として、著作権侵害を持ち出している、ということです。

 たまたま、いずれの事件でも著作物が関係していたので、著作権侵害の側面から本筋の問題を実質的に解消しようとしています。

 【1】の事件は、憲法が保障する表現の自由や報道の自由にも関わり、正面から否定するわけにもいかず、著作権法を持ち出したようにも見えます。

 【2】の事件の場合も、プライバシー権を取り扱う際には、表現の自由や報道の自由、知る権利といった他の人権との抵触・衝突が問題となります。

 【3】の事件は、性的被害を防止するために、著作権侵害が利用できる状況であったということでしょう。

 著作権法違反に当たる面があるとしても、このような使い方が著作権法の趣旨にふさわしいのかどうか、やや疑問を感じます。

 

 その他には、次のようなことがありました。

 

2021年3月26日 “ネタバレサイト” セリフ無断掲載は著作権侵害 東京地裁

 

 いわゆる「ネタバレサイト」に、連載中のマンガのほぼすべてのセリフが無断で掲載されていたことについて、東京地裁が著作権の侵害にあたると判断し、サーバーの管理会社に発信者の情報の開示を命じる判決を言い渡したことがわかりました。

 

 東京地裁判は3月26日の判決で、著作者が作品を無断で複製されない「複製権」と無断で公衆に向けて発信されない「公衆送信権」の侵害に当たると判断しました。

 

2021年4月7日 漫画村の運営者に懲役4年6カ月求刑 著作権法違反など

 

 人気漫画を無断で掲載した海賊版サイト「漫画村」の運営者とされ、著作権法違反(公衆送信権の侵害など)と組織犯罪処罰法違反の罪に問われた住所不定、無職星野路実(ろみ)被告(29)の論告求刑公判が7日、福岡地裁でありました。検察側は懲役4年6カ月と罰金1千万円、追徴金約6257万円を求刑し、結審しました。判決は6月2日です。