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金魚電話ボックスの著作権

 新聞報道によると、「国内有数の金魚産地、奈良県大和郡山市の商店街に4年間設置されてきた電話ボックス型の金魚の水槽が、現代美術作家の作品と酷似しているとの指摘を受け、近く撤去されることになった。」(2018年4月5日、YOMIURI ONLINE)とのことです。

 

 報道で知り得たことのみに基づいて、私見を述べてみたいと思います。

 

 著作権法による保護の対象とされるのは、「思想、感情を創作的に表現したもの」です。

 「金魚電話ボックス」は、現代芸術家が芸術作品として発表したというのですから、その背景に「思想、感情」があることは間違いないでしょう。そして、それを「表現したもの」でもあります。

 問題は「創作性」の有無だと思います。

 

 「金魚電話ボックス」は、既存の物に、ほとんど手を加えず、そのまま使っているように見えます。具体的には電話ボックスと金魚です。そして、電話ボックスを水槽として流用し、その中で金魚を泳がせています。

 私は、そこに創作性があるとは思えません。

 

 ある物を、本来の使用目的とは異なる使い方に流用することは、日常的に行われています。

 電話ボックスを水槽に流用するという着想に至れば、その中に金魚を放つのは、通常の思考であり、ありふれた行為であると言えると思います。

 これは、「創作的」な表現というよりも、「思いつき」であり、「アイディア」そのものではないでしょうか。著作権法は「アイディア」を保護するものではありません。

 

 芸術性の評価は個々人の感性に左右されるものなので、著作権の有無を検討するときに、芸術性の有無や高低は議論の対象にはなりません。これは芸術だといわれれば、そのとおり受け取るほかありません。

 

 私も、「金魚電話ボックス」が芸術作品であることを否定する気は毛頭ありません。

 しかし、その表現に創作性は認められず、私なりの結論としては、「金魚電話ボックス」は著作権法の保護の対象にはならないと考えます。