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契約書の形式

 わが国の民法は「契約自由の原則」を基礎としているので、契約をするかしないか(締約の自由)、誰と契約するか(相手方選択の自由)、どのような内容の契約をするか(内容の自由)は、契約当事者の自由な意思によって決定され、国家は干渉しないことになっています。

 

 従って、契約内容を文書化する契約書にも決まった形式というものはなく、書き方も自由です。

 しかし、契約書は、一般的に、形式や構成、言葉遣いなど、法律と似たような書き方のものがほとんどです。

 

 その原因のひとつとして、契約書の作り手は、大学で法律を学んだ人や、弁護士、行政書士など、仕事として法律を扱う人が多い、ということが考えられます。

  

 また、契約は当事者間のルールを決める法律のようなものなので、法律のように書くのが良いという考え方もあるでしょうし、明確、正確、簡潔な書き方を追求すると法律のようになってしまう、とも言えます。

 

 国の法律や地方公共団体の条例など、法令を起草する事務のことを「法制執務」といいいますが、法令の書き方は、形式から用字、用語、言い回しなどに至るまで、過去からの先例が蓄積され、体系化されています。これによって、全体として統一的な法体系が維持されています。

 

 法律や条例は法制執務のルールに則って書かれているので、大学や実務で数多くの法律に接してきた人は、具体的な法律を通して、経験的、間接的に法制執務のルールを学んできたとも言え、これに則った書き方の方が判り易いのも確かです。

 

 それに、法律のような言い回しにしたほうがもっともらしく見える、という理由もあるかもしれません。そのせいか、法律や契約のことを良く分っていない人ほど、法律調の、しかも難解な用語や言い回しをありがたがる傾向があるように感じます。

 

 ただ、契約書は、裁判官や弁護士、お役人だけが読むものではないので、契約当事者となる、ごく普通の人が読んで、間違いなく理解できるものであるべきです。できるだけ分り易い構成、平易な言葉遣いを心掛けるべきだと思います。そもそも契約書の書き方には決まったルールはないのだから、工夫する余地は大きいと思います。

 

 よく、ローンや保険の申込みなどでは複写式の契約書が使われますが、表面には契約の種類や目的、条件、契約者など個別の必要事項を書き込んだり、丸を付けて選択したりする欄があり、裏面には小さな字で、びっしりと一般条項が書き込まれています。

 

 裏面の記載事項は普通契約約款と呼ばれているもので、その内容についてはいろいろ問題点も指摘されていますが、契約書の形式としては合理的に出来ていると思います。

 

 不動産売買の際、宅地建物取引業者が使う契約書にも、冒頭に不動産の表示等を記載する欄があり、その後に契約条項が続く形式になっているものがあります。

 

 こういう形式は、もっと取り入れられても良いのではないかと思います。