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契約書を作る意義

 契約は、相手方に対して権利を得、義務を負うこととなる、法的拘束力を持つ約束です。

 法律上、契約は、申込みと承諾という双方の意思の合致のみで成立することとされており、一部の例外を除き、書面作成など、一定の様式、形式を整えることは必要とされていません。

 

※例外 → 保証契約(民法446条)や定期借地権(借地借家法22条、23条)、定期建物賃貸借(同 38条)など

 

 人の意思は目に見えないものなので、表現しなければ他の人に伝わりませんが、意思が伝達できさえすれば契約は成立します。口頭はもちろん、オークションや競りで見られるように、手を挙げたり、うなずいたりする動作だけでも契約は成立します。

 しかし、その場限りの話し言葉や動作は形として残らないので、後でもう一度確認したり、人に示したりすることができるように、文書という形に残したものが契約書です。

 

 より具体的には、契約書の作成には次のような意義があります。

 

■合意内容の記録として・・・複雑な内容になればなるほど、時間が経てば経つほど、記録を残しておかないと、どんな合意がなされたか忘れてしまうでしょう。これでは「言った」、「言わない」の争いになりかねません。契約書作成の目的は紛争予防であると言われる所以です。会議の議事録などと同じ役割と言えます。

 

■契約成立の証明・証拠として・・・契約は当事者の意思の合致によって成立しますが、契約書は意思が合致したことを証明する書類になります。民事訴訟法第228条第4項には、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」とあります。当事者が署名押印した契約書は裁判での証拠となります。

 

■決裁書類として・・・会社間などの組織と組織の間の契約では、現場の担当者が交渉にあたると思いますが、契約を成立させるには権限を持つ人の承認を得なければなりません。また、その承認を得る前に、法務部などの審査を経なければならない場合もあります。組織内では、契約意思の形成には一定の(場合によっては非常に長い)プロセスを経ることが必要であり、これは通常書類を回付することで行われます。契約書は決裁を得るための書類としても作成が必要になります。

 

■税務・会計証憑として・・・税務調査や会計監査の際、お金の動きの裏付けとして契約書の提示を求められることがあります。取引の実体が存在し、金額が合理的な範囲であることが前提ですが、当事者の合意に基づく取引であれば適正なものと認められ易くなります。

 

 このように、個人の日常的な営みの中では契約書作成が必要な場面は少ないかもしれませんが、会社の取引においては、契約書作成はほとんど必須と言っても過言ではありません。