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反社会的勢力の排除

1.暴力団等の反社会的勢力とは交際するだけで致命傷となる。

2.最低限、契約書等への反社条項導入を進めるべき。

 以前から一般企業を標的にした暴力団がらみの事件はたくさんありました。

 そういう事件に巻き込まれた場合、企業は警察に相談するなど、個別に対処していたと思われます。

 しかし、平成19年に政府の犯罪対策閣僚会議が「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(政府指針)を公表してからガラッと様相が変わりました。

 金融庁、証券取引所、経団連等が反社会的勢力排除の姿勢を明確にし、大企業を中心に政府指針に基づく対応が急速に広がりました。また平成23年には全都道府県で暴力団排除条例がされるなど、まさに国を挙げて反社会的勢力排除に取り組んでいる状況です。

 

 ほとんどの人にとっては、暴力団とか反社会的勢力と言われてもピンとこないでしょう。一部の地域や特定の業界のことであって、自分には関わりないと思っているかもしれません。

 しかし、特殊詐欺の横行や危険ドラッグの蔓延などの状況をみると、いつ何時犯罪集団の魔の手が伸びてきても不思議ではない状況にあるとも思えます。

 

 反社会的勢力排除の対象は暴力団等の犯罪集団そのものに限りません。暴力団等に資金を提供したり、その威力を利用する者はもちろん、親密な関係を持っているだけでも排除の対象になります。最近でも、元暴力団幹部と親しい関係にあり借金をしていた大学教授が解雇された事件がありました。暴力団員等と個人的に付き合うこと自体は違法ではありません。しかし、各都道府県の暴力団排除条例は暴力団と関係を持たないことを基本としていますし、企業も就業規則で交際を禁ずるようになっていますので、多大な不利益を被ることを覚悟しなければなりません。企業が暴力団等と関係を持つと、社会的な評判を落とすことはもちろん、銀行や取引先から取引を打ち切られる恐れもあります。大企業のみならず中小企業にとっても存続に関わる切実な問題です。

 

 政府指針では、概ね次の事項を企業に求めています。

①「反社会的勢力との関係遮断」の基本方針の取締役会決議、社内外への宣言

②反社会的勢力対応部署を設置し、情報管理、社内体制整備、研修活動、マニュアル整備等を行う

③外部専門機関(警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等)との連携

④企業倫理規程、企業行動規範、社内規則等への明文化

⑤反社会的勢力対応マニュアルの策定

⑥ステークホルダー(株主、役職員、取引先、その他特別利害関係者等)の属性チェック

⑦反社会的勢力データベースの構築と運用

⑧暴力団等反社会的勢力排除条項の導入

 

 中小企業でこれら全てに対応することは大変かもしれませんが、最低限「反社会的勢力排除条項の導入」は実施すべきと思います。

 

 「反社会的勢力排除条項の導入」とは、売買契約書などの中で、

①自らが暴力団等の反社会的勢力ではないこと

②反社会的勢力と関係を持っていないこと

③自ら暴力的な行為を行わないこと

を表明し、もしこれに反した場合、契約を解除できるとする条項を設けるものです。

 相手方と、契約などにより関係に入る前に、あらかじめ相手方の属性(反社会的勢力に該当するか否か)をしっかりチェックできればいいですが、これには手間も費用も掛かります。

 そのため、もし相手方が反社会的勢力と判明した時には、事後的に契約解除ができるようにしておくということです。

 

 最近では、裁判所でも相手方が反社会的勢力であることを隠して契約した場合、詐欺罪の成立を認めているので、素直に契約解除に応じない場合でも、警察や裁判所の力を借りれば関係を断つことができるでしょう。

 警察庁では暴排条項モデルを公表しているので、これを参考にして実際に使っている契約書に条項を追加すればよいでしょう。

ダウンロード
警察庁 暴排条項モデル
bouhaimodel20111125.pdf
PDFファイル 10.4 KB

 なお、既存の契約書への条項追加ではなく、別途この条項だけを記した契約書を締結してもいいですし、「誓約書」として相手に差し入れてもらう形式でも構いません。

 

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コメント: 3
  • #1

    小原正一 (木曜日, 18 10月 2018 17:00)

    警察庁の暴排条項モデルですが、警察庁のホームページ上では見つけることができないのですが、
    データ元を確認させてもらえますでしょうか?

  • #2

    行政書士プリズム法務サービス (金曜日, 19 10月 2018 05:20)

    お問い合わせの件、私も改めて警察庁のHPを検索してみましたが、私のブログに引用した「警察庁が示した暴力団排除条項モデル」は見当たりませんでした。もう少し丁寧に探せば残っているかもしれませんし、既に削除されてしまったのかもしれません。
    現在掲載されている「不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項・解説書」などを参考になさって下さい。

  • #3

    小原 (金曜日, 19 10月 2018 14:29)

    早速のご回答ありがとうございます。
    以前は警察庁のHPに掲載されていたのですね。